漁村では8月13日の夜に、西の海から先祖がやってくる。
お盆を懐かしい家で過ごし、16日の早朝に西方の彼方に旅立つ。
この話を、子供の頃から何回も聞かされた。
何年か前までは、海辺の段々畑に麦を植えていた。
麦わらで、先祖が帰国する船を造った。 船には食料の果物やダンゴや水を積んだ。
西方行きの帆かけ船が、8月16日の早朝に故郷の浜辺から何隻も出た。
今は無き、過ぎ去った漁村の風景。
海辺の段々畑は山になり、麦わらも無くなった。
先祖の見送りは、海岸から食料のお供え物を直接海に納めるだけ。
時代が変わり、簡素化されたお盆の風習。
秋に、我が家の似非おかみが、現実の西方へ旅に出る。
川口彗海の「西蔵旅行記」の国へ。
ネパールの旅で、今のところポカラには行くらしいが・・・
ランタンからキャンジン・ゴンパ(3,800m)へのトレッキングが主な目的らしい。
ぶらり旅で、カトマンズに滞在してから行き場所を探す、その日旅。
はるか彼方の遠い国が今身近に・・・。
映画のブラット・ピットは7年?。 約100年前の川口師は6年?の旅だった。
俺も地球の旅に出たいが、長期休暇もとれないし・・・
食べ物や、山歩きにも自信が無くなった。
8月16日午前5時。 先祖を見送った夜明の海。
この、はるか彼方に西方がある。