アイゴがいちばん多いのは夏だが、少ないが秋も獲れる。
夏のアイゴに比べると秋のアイゴは脂がのって身が厚くなり美味しい。
それでも市場に出すことがない魚。
原因は死後時間が経つにつれ磯臭さが増してくる。
背びれや腹びれのトゲに毒があり、刺されるとかなり痛い。
普段店頭で見かけないので食べ方が分からない。
見た目に美味しそうな魚でない。
秋のアイゴの美味しさは毎年のことなので漁師は知っている。
夕食の酒の肴に新鮮なアイゴを船上でさばく。
美味しさを保つには、なるべく早く内臓を処理すること。
魚を丸ごと家に持ち帰ると内臓や骨や背びれが生臭ゴミになるから。
取り扱いや調理の仕方で雲泥の差が出るアイゴ。
魚にもそれどれの個性がある。
漁師のアイゴの食べ方は刺身が一般的だろう。
磯のかおりは残るが白身の魚なので知らなければ高級魚に見える。
フライもいけるがなぜか煮つけにはしない。
身だけにして干物にもする。
漁村ではアイゴのことを昔からバリといって嫌われの魚。
家で食べるだけ数匹持ち帰り、残りは廃棄する。
バリを商品化すればの話もあったが漁師は問題にしなかった。
バリにはバリの扱いが漁村にあるから。
バリは昔から自家消費の魚。
美味しくても売れない魚がいてもいい。
魚は売り方だろうが、毒があってもフグは高級で高く売れる。
根っからの漁師に儲かる六次産業は無理だろう。
漁師が漁師でなくなる日が来そうだ・・・
世の流れがそうだから。
儲かればいい漁業と生き残る漁業はちがう。
暮らしが大切だから。
漁師は漁師でありたい。
今さらつぶしがきかない日々の積み重ね。
文化でもない漁村の暮らし。