漁村の裏手に線路がある。
赤や黄色い列車が毎日繰り返し走る海辺の路線。
赤色の車両はタラコで、黄色はタマゴ焼きとも言われる。
どちらも弁当に欠かせない馴染みの食材。
山陰本線ならでの風景。
使い回しの古い車両だが何故か古さを感じない。
昔風で機械らしい身近な鉄の乗り物。
ただの走る箱だが、愛着がある。
電気でなく油で走る。
近頃は字や絵のはられた車両を見かける。
動く広告だが景観から賛否もある。
多くの田舎者は何が書いてあるのだろうと思うが、
一部分ではサッカーJ1への夢を運ぶ列車。
半分は島根県内を走る山口線。
時代の中で走り続ける赤い重厚な40系の列車。
これまでどこの線路を走ったのか、この地が最後の仕事場だろう。
左遷でなく生き甲斐の地。
かたちや年式はどうあれ頑張る姿。
「普通」が妙に似合う。
列車の赤い色は旧国鉄カラーらしい。
赤い塗料は日焼けすると朱色になるのか、洒落たカラーリング。
人なら還暦の赤いチャンチャコ。
どこにいても車両が勇姿に見えるキハ40。
お人好しの赤鬼。
発車と同時に心地よい動力音も聞こえる。
窓のガラスも空く。
車両の内装は外観とはちがう。
エアコンも扇風機もトイレも付いている。
丸形のつり革が窓側と平行にぶら下がっている。
箱形の向かい合わせ座席もいい。
田舎らしい列車。
山口県ではキハ40は古くても現役の車両。
列車に乗った感じがする。
乗り物も景観。