浜の小屋

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2015年 02月 26日

漁村の酒屋




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おじさんは毎日のように海辺の酒屋に通う。
海沿いを片道30分も歩いて。
おじさんの暮らす集落には酒屋が無いから。
毎日欠かせないもの。

漁村の酒屋はいつも雨戸が閉まっている。
店売りを止めたから。
それでも自動販売機だけは立派に稼働している。
漁村の暮らしに必要だから。



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昔の酒屋は忙しかった。
漁村で酒を飲む人が多くその機会も量も多かった。
何かにつけてや意味もなく酒を飲んだ。
今は漁村の人が減り、酒を飲む機会も量も少なくなった。
それに輪をかけ家飲み酒は量販店で箱で買う。
安さと車が家にあるから。



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おじさんは毎日のように自動販機で缶ビールを二本買う。
一本は帰り道で飲み、残りは家に帰って飲む。
遠くで見守る田舎の生活習慣。
のど越し過ぎれば全てを忘れる大切な飲み物。
ドキュメンタリーなおじさん。


トンネルの先にある我が家へ一人歩いて帰る。
独り暮らしを楽しむように。







by hama-no-koya | 2015-02-26 05:03 | Comments(0)
2015年 02月 23日

漁港内




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青空を泳ぐ破れた鯉のぼり・・・?

誰が見ても意味不明の吹流し。
漁村では、誰もが知る伝達方法で何かの目印。
吹流しの揚がる日は年間40日ぐらい。

昔から大勢同時に物事を伝える時に旗で合図する。
大声は遠くまで届かないし、雨風もあり、場限りの伝達になる。
平面の旗では風がないと布がぶら下がり見えにくい。
吹流しは優れた計器で風向や力まで表す。
時代遅れだが現役で捨てがたいもの。
漁村の日常を改て洞察する。



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漁村の御旅所は神様の宿。
神様の本殿は御山にあるが、漁村の祭りには御旅所に泊りになる。
春祭りと十七夜祭の年間2回稼働する旅の宿。
村人が担ぐ神輿に乗られ神様は漁村でおもてなしされる。
祭りは村をあげての行事。

子供の頃は野球をやった浜の広場。
こんなに狭かったと今思う。
生れたところで暮らしていてもなつかしい場所。
子供たちは学年をこえて遊んでいた。
日が暮れるまで。

漁村に欠かせないのが車。
家屋敷が狭いから浜の広場が駐車場になる。
軽四の乗用車とトラックの二台を所有する漁師の家。
軽トラは道具で軽乗用は暮らしの足。

春先には天然ワカメを浜の広場に干す。
何十本もの竿に掛けて。
昔は、広場が干しワカメで覆われ茶色く変わった。
今はワカメを刈る漁師は一人か二人。
人手がかかるから。



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浜の草取りをする元漁師。
痩せたごろごろの浜土にも草が生える。
誰に言われた分けでもないが御旅所の周りを掃除する人。
春夏秋冬毎日コツコツと。


穏やかに晴れた日、
見慣れた風景にやわらかい温もりを感じる。
村人が暮らしているから。



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by hama-no-koya | 2015-02-23 05:12 | Comments(0)
2015年 02月 19日

浜の気圧計




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港の片隅に漁師が溜まる小屋が二つある。
本店と2号店があるように。
本店が狭くなったので数年前に別の場所に溜り場を移動した。
古い小屋は利用しないが本拠地として今も残る。
移せない大事な物があるから。

いちばん大事なものは神棚である。
天照大御神や氏神様や祈願祭の御札が納められている。
昔も今も変わらない漁村の厚い信仰。


本店に置き忘れたものがある。
必要が無い物だから。
気圧計は昔の漁師にとって大切なものだった。
先の天気を予測するために。
気圧の変化で風が起き、風が波を起こす海の天気。
気圧が短時間に変わるほど海が荒れる。
気圧の変化は今も大切だが・・・

昔の浜人曰く
天気図は同じ気圧数値の線で結んである。
数字の高い方が高気圧で低い方が低気圧である。
これまでは誰もが知ること。
天気図を山の等高線地図に置き替えろ。
気圧数値の高いところが高原で、低いところは山裾や谷底だと。
つまり等圧線も等高線と同じである。
水は高い方から低い方に流れる。風も同じである。
その線が密なほど水も風も急流になる。
天気図にも尾根や谷があると・・・
知ったような理屈。


気圧の単位がミリバールからヘクトパスカルに変わった。
同時に予報の当たる確率も高くなった。
衛星やレダーやコンピュータで解析するスーパー天気予報。
インターネットで1週間先の天気まで分かる。
携帯電話で1時間先の天気がピンポイントで分かる便利な時代。
それでも漁師は気圧配置が気になる。
ベテラン漁師は正確な天気予報の上に自分のデータを重ねるから。
明日の天気は漁仕事を左右する。


誰も振り向かないのに休むことなく動く浜の気圧計。
老朽だが時計のように毎日天気を刻む。
村のバロメータだから。

腕時計からスマートフォンまで気圧計が付いている時代。
捨てがたいものが田舎には現存する。
価値は無くても浜のお宝。



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by hama-no-koya | 2015-02-19 11:33 | Comments(0)
2015年 02月 17日

漁師の道具ナイフ




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漁師の道具で欠かせない刃物。
使用の目的はロープや網糸を切るため。
たまには魚の解体もする。


船上のナイフは乗組員が個人で準備する。
塩で錆びるが、いつも砥石で研いで切れる状態を保つ。
ステンのナイフは錆びないがすぐに切れなくなる。
本物の刃金のついた包丁を船では使う。
買えば高いので家庭で使い古した魚包丁を船用に改造する。
特徴は柄の部分を木で大きめに作る。
海に落としたとき水に浮くので回収できるから。
柄に黄色や赤の目立つテープを巻く。
木部の補強と置き忘れや足で踏まないように。


包丁を海に落としたら昔から神社でお祭りをする。
お初穂を包み海の神様にわび反省をする。
刃物が海を刺すから?
包丁が高価なものだから大事に使えの言葉とも思える。
それでも数年に一回は海で刃物を無くす。
ひんぱんに使うから。

鍛冶屋で打った包丁は砥いで刃が痩せても切れる。
だれが使っても名刀だと分かる。
マグロやカジキの内臓を取り出すときに通称名刀を使う。
獲ると直ぐに血抜き、腹を開けてエラと内臓を取り出し
鮮度を保つために氷を腹に詰め込む。
よく切れる包丁が必要になる。


漁師の道具。
黄色い包丁にも使い道や意味がある。
昔からの言い伝も。



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by hama-no-koya | 2015-02-17 05:12 | Comments(0)
2015年 02月 12日

漁師のカフェ




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田舎にはカフェがない。
漁師仲間と似非のオープンカフェを造った。
港にある錆びた大戸の建つ小屋前に。
遊び事だから看板はない。いい加減なみんなの溜まり場。
メニューは即席でセルフの日替わり。
ソフトドリンクから芋の焼酎まである。贅沢は言えない。
暮らしの間合いに人と会話もできる。
似非でも用は足り、落ち着ける。

椅子は浜で拾った流木の輪切り。
テーブルは荷物パレットを二段に重ねただけ。
食器やグラスはそこらの寄せ集め。
食品衛生法も消防法も建築基準法も関係ない。
無責任の何があっても泣き寝入り。
気ままな海辺のカフェテラス。




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たまにはカフェで寄合酒を飲む。
普段は、イカや小魚を船上で加工した手前干物が多い。
仲間で食べるので塩味もいい加減。
たまの祭りや大漁には似非調理人が刺身を無造作に切り盛る。
自分たちで獲った新鮮な地魚を惜しみなく。
飾り気も色気もないが、ものが旨くて妙に楽しい雰囲気模様。
箸とグラスと会話が自然体の宴卓。

オジサン達は浜の通りすがりに声をかける。
カフェに座って話さないかと。
老若男女に見境もなく。
ナンパ経験の無い小心者だがその確率は高い。
美味しい干物が目当てなく温和な雰囲気に人が惹かれる。
海辺のオジサン達には下心が無いから?
閉鎖と社交が重なる現代の田舎。



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本日のつまみは醤油で漬けた干物。
小ぶりのマイワシのひらき、焼き加減が難しく焦げる。
昔から、隠し味にみりんを使う。
焼き場は経験の浅い後輩漁師が担当する。
昔からの言わずと知れた浜の慣わし。
刺身は器用な先輩漁師が手際よくさばき山に盛る。
魚扱いの技術と経験が活きる。


田舎には楽しみが少ないと若者は街に憧れる。
憧れは夢でもあり老いも若きもない。
働くところが少ない田舎だが、
職種と所得を選ばなければ何かの仕事はある・・・。
厳しもあるが青空も海もある漁村。
憧れと暮らしが同居する。


田舎で暮らしても、街のカフェに行きたい。
サントリーホールの隣広場で芋焼酎の湯割りが飲みたい。
夢のない夢をみる漁師。
手の届く気楽や明日の願望として。

浜飲みは希望で「長屋の花見」。
たくあんが卵焼きに見える浜の似非カフェ。
木に伝わる尻の温もり。



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by hama-no-koya | 2015-02-12 05:11 | Comments(2)
2015年 02月 08日

山陰本線の宇田郷駅




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十年前の宇田郷駅。
駅名の看板が無くなって何年も経つ。
標札が消えた時、周辺を仲間と探したが見つからなかった。
風で飛んだのか、誰かが外したのか?

看板を付けて下さいとJR西日本にお願した。
現状は「なしのつぶて」。
無くても困らないが、無ければ無性にさみしい。
建物は顕在だが埋もれる潜在力。
看板は駅舎のパーツ。



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今はさみしくても・・・
その昔、田舎町に待望の鉄道が敷設された。
駅をどの場所に造るか決まらない。
宇田の集落と惣郷の二大集落が誘致で話し合いをしたが、
折り合いがつかず互いの中間点に駅を造った。
その場所はさみしい浜辺だった。
駅の周りには家がなく海と駅舎があるだけ。
今ではそれが売り言葉。

駅の名前も決まらなかった。
宇田と惣郷の間にあるので「宇田郷駅」に決まった。
誰かの話でも信ぴょう性は高い。

同じような駅名が東京にもある。
国分寺と立川の中間にある国立駅周辺は整備され美しい。
宇田郷は駅前に海があるだけ。
人がいなくても駅名の看板くらいは掛けて欲しい。
駅には人の思い出があるから。

宇田郷駅は海のそばにある。
冬場は北西の季節風を真面に受ける。
だから建物の痛みも早い。
老朽しても近くに駅があるだけで村人は嬉しい。
昔からの暮らし風景だから。


何もない無人の駅なのに、
「なんにもないけど・・・ご飯食べていかない?」
そんな人声がしそうな宇田郷駅。
通りすがりの旅人に、やさしく呼びかけるように。
一見は忘れられた海辺の駅。


ここは山口県阿武郡阿武町大字宇田無番地。
駅前の郵便ポストに書いてある。
人も年寄るが同時に建造物も年寄る田舎の現風景。
哀愁と希望の宇田郷駅。

再生と創生の予感がする海辺の田舎町。
村のエイジングケア。



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by hama-no-koya | 2015-02-08 22:53 | Comments(0)
2015年 02月 06日

尾無丸




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昭和の初期から漁村に伝わる大敷網漁。
イワシからクジラまで大小あらゆる魚を獲ってきた。
網の仕掛けは大きく専用の船を使う。
人も十数人は必要とする。

昔し、村人たちが金を出し合って大敷網漁を起業した。
一度に多量の魚を獲ることができるから。
漁村が豊かになると思って。
漁には年周期があって、良い悪い、まあまあ、を繰りかえす。
大きな時化で網が破れる損害もある。
それでも80年ぐらいは続いている漁村の大敷網。
親子三代が時代を経て従事する人もいる。
マグロが大漁でも氷や運賃が高いので捨てた昔。
今となれば嘘のような話。


その昔は、一網を3隻で手繰り寄せていた。
今は、船の大型と機械化で一隻で操業できるようになった。
漁場は港に近く20分も走れば到着する。
操業時間も夜明に出港して荷揚げを含め午前中に終わる。
不漁もあれば思いがけない大漁もある。
一攫千金もある大敷網漁。
昔も今も変わらない漁師の夢とおもい。


船の名前は尾無丸。
集落名の尾無をそのまま船名にしただけ。
船齢30年近くなる老朽船だが、
いくつもの波を乗り越えてきた今も使える船。
新らしい船が少なくなった漁港。
古くても大切なもの。


黒い煙をはいて漁港を出る大敷網の船。
地元の人だけが知る村の歴史。
伝統漁法の大敷網。



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by hama-no-koya | 2015-02-06 05:10 | Comments(0)
2015年 02月 02日

加州丸




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三十年前頃に造った古い加州丸に今も乗る。
うだつの上らない漁師だから。
仲間の漁師は大きな船に造り替えた。
腕のいい漁師だから。

加州丸の船名は憧れでつけた。
ママス&パパスの名曲「夢のカルホルニア」が好きだったから。
若気の至りで思いつきの命名だった。
漁師仲間は笑った。 理解できない船名だから。
本人は加州丸に今でも大満足。
漁師にとって船は道具であり仕事場でもある。
日常で感じないが愛着。

あの頃は魚も多かった。
ヒラメもタイもイカも思うように釣れた。
魚の値段も今より高かった。
腕の悪い漁師もそれなりに儲かる時代。
なにより漁が楽しかった。
夢中で働いた。

近年になり魚が釣れなくなった。
海の魚が減ったから。
原因は漁師が魚を獲りすぎたからだろう。
漁具の進歩もある。

昔は漁場のポイント探しに苦労した。
山と目標物の重なる2本線の交差点を目視した。
専門語で「ヤマダテ」という方法。
視界が悪い日は漁場に着けないこともある。
自然が管理する海洋資源。
思えば面白い、過ぎてきた豊かな時代。

GPSでピンポイントの漁ができる。
目的地もコンパスなしで機械が案内する便利な時代。
十年の経験が数分で習得できる。
網も釣り道具も細くて丈夫な資材になった。
その反面、魚の資源が減る。
道具が進歩したから。


今日も漁に出る。
つぶしのきかない漁師だから。
海は広くて大きい。



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by hama-no-koya | 2015-02-02 05:12 | Comments(0)