今年もトビウオがやってきた。
目に青葉、山ホトトギス、初トビウオ。自分で勝手に詠む。
奄美地方では周年獲れるが、南日本海では初夏の魚。
南の海からトビウオがやってくるのは産卵のため。
昔は、トビウオの刺し網漁が盛んに行われた。
夜明けに網を仕掛け、日の出と共に網を海から揚げる。
多い日には、一網何千匹のトビウオが網の目に刺す。港に帰り魚を外す。
朝の港は、トビウオを満載した船で活気に満ちていた。
魚を早く網から外さないとトビウオの鮮度が下がる。だから家族全員で手伝った。
そんな暮らしの風景が浜辺から消えて何年も経つ。
トビウオの価格が安い、儲からない。それが原因で長年続いた漁法が終わる。
トビウオ網が倉庫の奥に積まれる。暮らしの道具が産業廃棄物に化す。
時代の流れで、初夏の風物詩が漁村から去った。
旬のトビウオの刺し身は美味しい。
脂身でないあっさり系の魚。純な旨さが口に広がる。
どんな味と聞かれても、「トビウオの味がする」。それ以外の答えが見つからない。
繊細な魚の味だから、醤油を選びたい。
今晩食べるトビウオの刺し身は、定置網で獲った魚。
日に日に、トビウオの獲れる数が増えている。盛りは6月の5日前後。
海も獲れる魚で季節を感じる。
最盛期には値段も下がり、暮らしの味に変わる。