ここは高知県四万十町。
予土線の打井川駅に止まる列車。
四万十川もここまで上ると川幅が狭く流れも見られる。
河口の中村は四万十市で上流の打井川は四万十町。
同じ名前の市町が川沿いに存在する。
四万十川が流れているから。打井川の駅前は山と川はあるが家が無い。この辺は豪雨になると川の水位が途轍も無く上がるらしい。
四万十の川沿いに点在する暮らしの集落。
鉄道と道路が川と並行する。
宿は川辺の民宿に泊まる。家の前が山と田圃で四万十の支流が流れていた。山の稜線が見えなくなる夕暮れ。夜は地元の焼酎と七輪で焼いた四万十の鮎。四万十の酒と話がはずむ。川の魚だけでなく、山の八色鳥の話まで。飲みながらの地話。
四万十川を渡る短い列車。
何となく乗りたくなるような急がない車両。
田舎とはいえ恐竜を乗せた太古の「ホビートレイン」が走り、
似非だが「0系の新幹線」車両も走るローカル線。
川と山だけの目移りしない風景。
大人には貨車を改良した「しまんトロッコ」列車だろう。
のどかな自然の山里だから。
愛媛の海と高知の山を結ぶ暮らしの物流。
予土線は仲良く伊予と土佐。
車両は変わっても大切なものは変わらない。
そんな気がする地域。
話は飛ぶ。
ここは山口県阿武町にある宇田郷駅。
宇田郷駅の前には家がない。
予土線の打井川の駅前には四万十川があるだけ。
山陰本線の宇田郷の駅前には日本海があるだけ。
海と川のちがい。
ちがいはあっても感じるものは似ている。
同じ日本の風景だから。
海に近い宇田郷駅と川に近い打井川の駅。
旅をしていても自分の地域と重なる。
なんとなく原点に辿りつく。
原風景の意味。